ガラスの棺 第3話


辿り着いた先は、懐かしい場所だった。
ゼロが本来立ち入るはずのない場所であり、私がもう来るはずのない場所。
今は使われていないアッシュフォード学園のクラブハウス。
再建された学園に新たに作られたクラブハウスは、理事長の意思で閉鎖されている。ギアスキャンセラーで全てを思い出した理事長は、ただの感傷だとわかっていても、嘗ての主君であるルルーシュとナナリーが中睦まじく暮らしていたこの場所・・・もう彼らが住んでいたあのクラブハウスはこの世にはないのだけれど、それでも形だけだとしても残しておきたいと、あの頃と同じ家具をそろえ、完全再現してから閉鎖したのだ。
ここに立ち入ることが出来るのは、ルーベンとミレイだけ。
だから、今回の件にも彼女が絡んでいる事だけは解った。
既に夜も更け、学生は寮に戻り誰もいない。
教師も警備もルルーシュが通っていた頃と変わっていないため、今もルルーシュのギアスの支配下にある。勝手知ったるという言葉が似合うほど、黒塗りの車は暗い学園内を迷わず進んだ事から、運転手も関係者だと解る。
そうして誰にも気付かれず、誰にも知られず、本来立ち入ってはいけない仮面の英雄が、当たり前のような顔で扉を潜った。
以前はよく来たクラブハウスの扉。
楽しかったことも、辛かったことも・・・彼に関する思い出が詰まった場所。
一瞬ためらったが、私は意を決して建物内へと足を踏み入れた。
明るいエントランスには、見知った顔がいた。

「おかえりなさいませ、ゼロ様、カレン様」

深々と頭を下げたのは、メイド服こそ来ていなかったが、あの当時ここで仕えていた篠崎咲世子だった。あの頃とあまり変わらない彼女は、あの頃と同じように私たちを奥の部屋へと案内した。
そこは彼らの居住区とは別の部屋で、厳重なセキュリティが施されていたが、咲世子は迷うことなくパスワードを打ち込み、カードと静脈認証、網膜認証を行うと、ゼロとカレンをその奥へと案内した。

「・・・あの、ここは?」
「君は、この学園の地下に皇帝直属の機密情報局があった事を知っているか?」

前を歩くゼロは振り返ることなく尋ねてきた。
その話はルルーシュから聞いていた。
だから「はい」と迷わず答えた。

「以前は図書館からその施設へと入ったが、そちらの入口は封鎖し埋めた。そしの代わりにここに新たな入口を用意した」

だから、今から行くのは当時の皇帝シャルルが作り出した機密情報局。
ルルーシュが制圧後は黒の騎士団のアジトの一つとなっていた場所。
カレンはその当時日本に居なかったため、この場所に立ち入ったのは初めてだった。
全てが終わり、この学園に戻ってきた時には、既に図書館からの通路は封鎖されていたた。入口があると話には聞いていたので探したが、その場所には何も無く、こっそり書棚ごと移動してみたが、後ろには重厚な壁があるだけだった。
成程、あんな人の出入りのある場所よりも、立ち入り禁止の場所に入口がある方が安全だろう。地下の扉をくぐり、機密情報局の本部であった室内に入ったカレンはますますその思いを強めた。何せこんなに大量のモニター・・・明らかに監視用の施設とわかる部屋が学園内にあると知られれば、それだけでアッシュフォードの名前に傷が付きかねないのだから。

「いらっしゃ~い。久しぶりねカレン、そして・・・ゼロ」
「よお、久しぶりだな二人とも!」

施設内には、ミレイとリヴァルがいた。
ずい分前から待っていたのだろう、暇つぶしに使われた雑誌が山と積まれていた。

「急に呼び出してすまない」

あくまでもゼロとしての態度は崩さずに二人に言った。

「いいっていいって。俺で力に慣れる事なら何でも協力するぜ!」

学生時代よりは精悍さを増し、落ち着いた雰囲気に見えたのだが、口を開いてみればあの頃とあまり変わらないリヴァルは、ゼロであるスザクに協力を求められた事が嬉しいようだった。
それはミレイも同じようで、こちらも大人びた雰囲気になっているのだが、あの頃と変わらない笑顔でうんうん、と頷いていた。

「ゼロ様、私は上に戻ります」

咲世子はそう言うと一礼し部屋を後にした。
彼女がミレイとリヴァルもここに案内したのだろう。
もしかしたらまだ他にも来るのかもしれない。

「カレン、君も座ってくれないか。今回の件について話をしたい」
「解りました」

カレンは返事をするとすぐに空いている席についた。

「ストップストーップ!話す前に、まず言わせてもらうわ」

ミレイは真剣な表情でゼロに向き直った。

「ゼロ、貴方スザク君よね?話をするならまず、その仮面を脱いでもらえないかしら?それともここには監視カメラとかあるの?」

監視する部屋には見えるんだけど。
と、ミレイは辺りを見回しながら尋ねた。

「・・・いええ、ここに監視カメラも盗聴器もありません」

ゼロはそう言いながら、仮面に手をかけた。
ギミックが作動し、仮面が小さく折りたたまれ、その下から懐かしい栗色の癖毛が現れた。最後に見た時よりも精悍さが増した、それでもやはり童顔なのでとても同い年には見えない青年は、感情の見えない表情のまま口元を覆っていた布を引き下ろした。
その表情はナイトオブセブン、ナイトオブゼロであった頃よりもずっと冷たく見えた。
ゼロとは無。
中にいる者の感情など不要。
個人的な喜怒哀楽の感情を表すことはもうない。
そんな生き方を5年続けていた事が嫌が負うにも解ってしまい、三人は思わず息をのんで悲しそうに目を細めたが、ゼロは、かつて枢木スザクと呼ばれていた青年は、周りの視線など気にも留めなかった。

「では、話を進めましょう」

四人が席についたのを確認すると、スザクは話を始めた。

「本来、我々だけで片付けるべき事ですが、人手が足りないと判断し、 貴方たちならきっと裏切らずに協力してくれると思い、声をかけました」

信頼されていると感じたのと同時に、重いプレッシャーが三人にのしかかった。
ゼロであるスザク、そして元宰相であったシュナイゼル。
この二人が人手が足りないと判断した。
エースパイロットであるカレンはともかく、ミレイとリヴァルが役に立てることなど、報道関係以外は思いつかない。スザクの頼みならなんでもやろうと思ってきたが、考えてみればスザクではなくゼロの頼みなのだ。場違いなんじゃ?とリヴァルは顔をひきつらせ、ミレイはすっと目を細めた。

「何があったのか聞いていいかしら?」
「問題が発生しました」
「問題?」
「あのR-Cってやつよね?何なのR-Cって?」

ゼロがスザクに戻ったことで、カレンも普段の言葉使いに戻して尋ねた。あの時の警報。ゼロに直接入り、シュナイゼルが忙しなく動くほどの問題が起きたのだ。
R-C。
思いつくことなど何もない。
強いて言うなら、CはC.C.のCだろうか?と思うぐらいだ。

「そう、R-C。本来であれば、絶対に起きないはずの、起きてはならないはずの事態が起きました・・・。ルルーシュの墓が暴かれたんです」

R-CはRoyal Crypt。
王家の墓に仕掛けられた警報装置は、彼の王の従者達にその墓が何者かの手により暴かれた事を知らせたのだった。




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王家の墓は正しくはGrave of a royal familyなのかな?(英語苦手)
グーグル翻訳だとRoyal tomb(英語嫌い)
weblio翻訳でRoyal CryptとGrave of royal familiesって出てきたので、前者を採用。
ギアスといえばRとCの組み合わせの方がらしいかなと。
R因子とか、C.C.とCの世界とか。
以上の理由から、「それ日本語訳にしたら地下室だよ!」ってツッコミは拒否します。

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